銅板や防藻ライニング材による防藻のメカニズム
銅は、大量に経口摂取した場合は嘔吐や肝臓、腎臓の障害が見られ、溶血性貧血や毛細血管の損傷を伴うことがあり、重症の場合は中枢神経障害の症状が見られる。しかし少量の場合は、必須微量金属であり、成人体内には 100〜150mg含まれており、1日の摂取量は1〜2.8mg程度といわれている*2)。逆に銅が欠乏すると、貧血、成長遅延、浮腫、下痢等が現れる*2)。

つまり、人や動物に対して毒性が低く中毒症状がほとんど見られないため、排水規制も緩やかになっている。しかし、水生生物に対しては強い毒性があり、藻が水路や壁に根を付け繁殖するのを防止する働きがある*3)。このメカニズムを応用して開発されたのが、銅板による防藻対策技術である。

これに対し、防藻ライニング材はライニング材に銅の錯体を添加することにより、藻の根が進入してきた時に、銅の働きによって根の侵入および成長を阻止する。このため、多少藻が付くことはあっても成長が阻害され、35 程度の低い水圧で簡単に除去することができる(写真−4)。
処理水による銅の溶出実験
実験は、愛媛県工業技術センターにおいてI市H浄化センターの最終沈殿池の処理水を用いて行われた。処理方法は嫌気・好気活性汚泥法で、pHは7.25、ベースの含有銅量は越流トラフに防藻ライニング材を使用しているため、0.04mg/リットル含まれていた。

実験方法は、1リットルの容器に処理水0.8リットルを入れその中に試験片を懸垂した(写真-5)。これらの試験片を、室温20℃の部屋に静置および振騰試験機で水流を発生させ(写真-6)、1、5、10、20、30日後に試験片を取り出して、処理水中の銅の定量分析、銅板の厚み測定を実施した。実験に用いた試験片は、銅板が40×60×0.35mmで、防藻ライニング材は40×60×1mmで、厚さは標準的な4)厚みを用いた。

振騰試験機の振騰数は1分間100回転とした。この回数は流速に換算すると1m/分となり、越流トラフ内流速よりかなり早いが、越流ノッチからの落下点の流速を考慮して、この流速とした。

銅の定量分析は、誘導結合プラズマICP発光分析装置を用いた。