フッソ系ポリマーセメントの耐硫酸性
今回の実地試験は、エポキシ系の防食材で実証済みである金属の抗菌性の利用と水素フッソ樹脂の耐硫酸性の相乗効果を期待したものであるが、フッソ系ポリマーセメントのみの耐硫酸性を確認した。
<配合>
(1)
市販のポリマーセメント(樹脂は1液型)
(2)
セメント/水系フッソ樹脂=100/15
(3)
セメント/2液型水系エポキシ樹脂=100/15
<試験方法>
ビーカーに上記材料を流し込み、室温で30日乾燥させる。その後、表層に30%の硫酸を流し込み、2週間後と1ヶ月後の材料の状況を確認した。
<結果>
写真-4に結果を示す。1ヶ月後では(1)と(3)が硫酸で崩壊しているが、(2)には変化がない。
ラインガードFに使用の水系フッソ樹脂の性能
ラインガードFに使用している水系フッソ樹脂の性能を表-3に示す。
表−3 ラインガードFに使用の水系フッソ樹脂の性能
No.
項目
内容
備考
1
樹脂系
水系2フッ化ビニリデン
 
2
フッソ含有量
40%
 
3
弾性率(24℃)
1.1×104
kg/cm2
4
破断強度
2.1×102
kg/cm2
5
伸び
260%
6
耐候性(光沢保持率)
90%
SWOM 4,000時間
7
耐硫酸性(10%)
異常無し
下地(ストレート)乾燥(20℃ 7日)
スポット試験(7日)
8
耐水性
異常無し
20℃ 30日
9
耐温水性
異常無し
50℃ 7日
10
耐アルカリ性
異常無し
飽和水酸化カルシウム 20℃ 30日
11
耐湿潤冷熱
異常無し
JIS K 5660 7サイクル
12
付着性
異常無し
基盤目試験 ストレート 2mm角
今後の課題
「ラインガード」(水系エポキシ樹脂防藻塗材)は、既に全国の下水処理場の最終沈殿池の防食・防藻対策で20年の実績を持っている。
今回の試験は、「ラインガード」を改良した防食・防藻・抗菌性のある「ラインガードF」で実証試験を行った。
「ラインガードF」の構成は、実績のある金属、銅にニッケル、各種チタン類を抗菌材として配合し、ポリマーセメントのバインダーとしては、耐硫酸性のある水系フッソ樹脂を利用した。
試験結果としては、水性の材料のため作業環境が良く、付着性、防食性において有効な結果を得た。
この材料は、下水処理に利用されている有用な微生物にも影響が少ないことが確認されている。
その後、判明した皮膚障害や発癌性など有害とされているニッケルを除き、新たに2003年5月に新システムの防食塗材を特許出願した。
今後は、中性化・硫酸イオンの侵入深さなどPRTRや日本下水道事業団の防食指針“下水道コンクリート構造物の腐食抑制技術”の適応を確認し、下水道施設に貢献していきたい。